本講義では、企業が適応を迫られている「グルーバル化」という現象を理解することからはじめる。しかし、「グローバル化とは何か」という問いに明確に答えられる人は、それほど多くはないだろう。よって、既存の研究や文献に依拠することで、グローバル化の特徴を把握する。グローバル化が誇張され過ぎていると批判する準グローバル化という考え方にも触れる。それらの概念的な説明に加え、グローバル化やグローバル社会の特質が表出した具体的な事例にも目を向ける。グローバル化への理解は、国際ビジネス論のみならず、グローバル・スタディーの学びの基礎になる。 次いで、グローバル化を推進する力と阻害する力をとりあげる。推進力として、経済発展と所得の向上、情報化、そして企業の国際化に目を向ける。「経済発展と所得の向上」では、国の経済成長の動態と、その中で日本企業が注力している新興国ビジネスの実例を解説する。「情報化」では、世界における情報化の進展、例えばインターネットユーザーや無線アクセスの拡大の地理的分布の変化、ファスト・ファッション企業による情報を用いた商品開発の事例を解説する。「企業の国際化」では、巨大企業の国籍分布、多国籍企業による知識の越境移転、GATT・WTOによる貿易自由化、日本のFTA・EPA戦略を解説すると共に、近時の越境ECビジネスの成長について解説する。阻害する力としては、文化の壁、政治の壁、国際紛争やテロ、その他の突発的アクシデントに目を向ける。「文化の壁」では、先行研究に基づき文化の意味や国家間の文化の差異などを解説すると共に、個人ならびに企業による異文化適応について解説する。「政治の壁」では、国際的なビジネス展開の参入障壁となりうるフォーマルそしてインフォーマルな障壁ならびに新たな保護主義とも称される地域経済圏やブロック経済圏の創出を解説する。「国際紛争やテロ、その他の突発的アクシデント」では、国際的紛争による入国審査の変化、狂牛病や感染症パンデミックによる産業や企業への影響を解説する。 以上のような学びを通じて、グローバル社会ならびに国際ビジネスの特質を理解し、自らのキャリア形成に活かせる理論的・実践的な知識の修得を目指す。
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